列車は走り続けなければならない
キッチンの外観や構成は、すべてお客様が考えます。生産現場では、品質と柔軟性、そして何より製造のフェールセーフという鉄則に基づいてカスタマイズが実現されます。生産の最初から最後までこれを保証しているのが、HOMAG のシステムです。
キッチンに無垢材を使うか?ガラスと組み合わせるか?ワークトップはストーン製にするか、セラミック製にするか?Breitschopf 社はそのようなイメージを日々実現することによって、顧客の希望に沿った特別なキッチンを作り上げています。顧客は、オーストリア全土にいる 50 人のプランナーと一緒にオリジナルキッチンをデザインすることができます。その後、キッチンは国産の高品質な材料を用いて仕上げられるのです。Breitschopf 社は自社のキッチンの品質に自信を持っており、10 年保証も提供しています。さらに、この会社のキッチンは中継なしで生産現場から直接配送されるため、魅力的な価格性能比を設定でき、なおかつ高いレベルの品質とカスタマイズを提供できるのです。「特に、オーストリアの大部分をカバーする 6 つの販売拠点では、お客様と直接対話しながら当社のキッチンを販売しています」とヨハン・ブライトショップフ社長は強調します。最終的には、20 人の組み立てチームが新しいオーナー宅で設置を行います。
年間 2000 台のオリジナルキッチン
しかし、計画から製造・組み立て、サービスの全範囲にわたり、どのようにしてこのカスタマイズを実現しているのでしょうか?なにしろ、Breitschopf 社は年間 2000 台ものキッチンを製造しているのです。表面は、木材、ベニア、メラミン、塗装まで幅広い選択肢が提供され、しかも、クラッシック、デザイナーズ、カントリーハウスの 3 つのタイプに対応しています。その他に、Breitschopf 社は毎年新しいトレンドを取り上げています。「例えば、現在、特に塗装ではマットな表面が人気を集めています。他には、木材と組み合わせた明るいキッチンが好評です。無煙炭やコンクリート色も人気があります。」想像力や好みに制限はありません。ブライトショップフ社長は、「当社のキッチンの 90 パーセント以上に、ストーン製またはセラミック製のワークトップが含まれています。そのようなことは我が社だけです」と強調します。個別キッチンを購入するのは個人の顧客に限られ、また、家を建てる人の多くは、どちらかというとシンプルな最初のキッチンを上質なものに取り換えたいと思っています。「当社の典型的なお客様は、スマートで同時に耐久性のあるキッチンを求めています」とのこと。では、Breitschopf 社はどのような手法を使ってこのような製品範囲を実現しているのでしょうか?そして、どのような原則に基づいているのでしょうか?第一の原則は、製造における垂直範囲の高さです。ここでは、150 人の従業員が計画から取り付けまでほとんどすべてを自分たちで行います。とりわけ、製造のアプローチとその原則は、製造の全工程を走り抜ける列車に喩えられます。つまり、この列車はそれぞれのキッチンを乗せ、9 日後の完成までそれを運ぶのです。
線路と水路によって
製造工程を走るこの列車は、流れの原則で個別生産を実現しています。厳密に 9 日間のリードタイムの場合、生産準備に 3 日、製造に 6 日をかけ、受注に関連した注文ベースでキッチンを生産します。「このプロセスは時間的に厳しいため、それに合わせて機械を調整しなければなりません」と生産部長のマンフレッド・ホフマンは強調します。「つまり、高い柔軟性が必要なだけではなく、とりわけフェールセーフが重要になります。納期は決まっているので、材料は常に流れている必要があり、流れを止めることは絶対にできません。」 喩えるなら、列車の貨車は注文を乗せるオーダーピッキングトレイであり、線路は連続するローラコンベアということになります。「まず、材料がカットされ、それがトレイに乗せられ、ローラコンベア上で生産工程全体を流れるのです。常に同じ速度で進み、後戻りは絶対にありません」とホフマンは言います。
Breitschopf 社では、この列車が通過する 6 つの製造部門を川の名前にちなんで、イン、ドナウ、ドラーヴァ、エンス、シュタイア、モルダウと名付けました。列車は「イン」グループから出発します。ここでは HOMAG 製のパネル供給装置「STORETEQ S-200」と 3 台の鋸が働いています。ここでもフェールセーフが重大なテーマです。そのために、特に「SAWTEQ B-400 profiLine」を含む 3 台の鋸が導入されたのです。「毎日ここを通過する 1500 個の部品を 1 台の鋸だけで自動切断することも可能かもしれません。しかし、重要なのは、1 台の機械が故障しても列車を走らせることです。当社の短いリードタイムと、受注に関連した注文ベースの作業ではそれ以外に選択肢はありません」
空路も活用
同じことはドナウグループにも当てはまります。ここでは 4 台の縁貼機が作業しており、そのうちの 2 台は HOMAG 製です。旧式の機械では薄縁材のみが加工されますが、あらゆる方式に対応した新しい「EDGETEQ S-500 profiLine」上の縁材には、レザー技術とホットエア技術が適用されます。例えば、「airTec」方式によって高品質のゼロジョイントが製造されます。ロータリーエアヒーターは、そのために空気を加熱し、同時に後の再加熱用の蓄熱器としても用いられます。従って、必要な空気量が減少し、周囲の加熱も抑えられます。Breitschopf 社のニーズに特別に調整された EDGETEQ S-500 について、ホフマンは、airTec の他にも特にアングルストッパーを装備したかったのだと強調しました。その結果、現在では、アングルストッパーによって直角の正確なルーター加工が可能な接合ユニットで作業が行われています。「当社にぴったり合う機械を見つけるまでには何年もかかりました。EDGETEQ S-500 は、当社の要件を完全に満たしてくれる機械です。」
継続と前進を止めないこと
縁材加工後、選択された部材は、次に HOMAG のマシニングセンター「BMG 311 Venture」に進みます。ここで部材は、バッファ時間や待ち時間なしで加工されます。これらの部材は、円形トレイ、エクステンションテーブルまたはカバーパネルで、いずれもエッジが直線ではありません。「しかし、これは大量にあるわけではありません」とホフマンは言います。加工が完了し、研磨され、塗装された部材は列車に積み込まれ、その後、大部分はさらに穴あけや取付けに回されます。そこでは、2 台の垂直な HOMAG-BAZ 「DRILLTEQ V-500」が前板の穴あけを行い、面積の大きなパーツは「DRILLTEQ H-600」が担当します。このフローのグループでは、独立したダボ打機が長期間使用できなくなった時に、V-500 がフェールセーフを提供しました。「V-500 にダボ打込み用ユニットを装備してもらったので、ダウンタイムを補うことができたのです」とホフマンは説明します。
製造のコントロールセンター、つまりその頭脳となるのが、長年にわたり Breitschopf 社と付き合いのある Schuler Consulting 社の ERP および PPS ソフトウエア「MCS」です。「MCS は、スムーズなインターフェースという観点から、当社が HOMAG を選択した重要な理由でもあったのです。データは、ERP および PPS ソフトウェアから「woodWOP」に伝送され、これが WOP プログラミングの他に、CAM システムとして機械の制御も担っています。「例えば、V-500 および H-600 の穴あけプログラムも直接これらの機械へ送られます。しかも、非常にスムーズです」と生産部長は説明します。
顧客との直接対話で…
ルーター加工、鋸加工、穴あけ、ダボ加工された構成部品は、最後に、分岐点から 2 つの線路に分かれ、組み立て方向 (ここでは特にボディがボディプレスで組み立てられる) へ、または機械で実施できない作業を行うための手作業スペースへと送られます。「ここでも一連の作業がローラコンベアのように流れ、順番に処理されます」とホフマンは言います。キッチンが完成すると、今度は線路から道路に切り替わり、トラックによって直接顧客の元に送られます。「これに対して、南オーストリアでは運送会社が配送します。そして、地域の組み立てチームがお客様のもとでキッチンの組み立てを行っています。」
何があっても…
「近年は、多くの投資を行いました。このポテンシャルを使って、今後数年間は継続して売上げを伸ばしていきたいと思っています。そのための蓄えが当社の機械なのです」とブライトショップフ社長は説明します。もちろん、そこまでの区間や要件も変わることはありません。 「スループットが適正であることが必要です。毎日の作業量は必ず達成しなければなりません。それによって当社は 6 日のリードタイムを維持しているのです」とホフマンは改めて強調しました。このことを確実に保証できるように、このキッチンメーカーは HOMAG ともサービス契約を結びました。「さらに、当社ではリモートメンテナンスも可能です」と生産部長は付け加えます。「万が一機械が故障しても、別の一台がすぐに仕事を引き継ぐことができます。これによって、何があっても生産は常に継続されるのです。」